たまじぃじがすい臓癌であることが発覚し、もう長くはないかもしれないとわかり、目の前が真っ暗になったたまですが、いまは希望をもってじぃじに会いに行っています。


じぃじは太平洋戦争の10人に1人の生き残り兵士。きっと生きてくれる!お医者さんはじぃじがいま生きていることだって不思議だといっているのだから。


じぃじが入院して、田舎に1人残ったたまばぁば。心配した両親は家へ呼び寄せた。


たまばぁばはもともと体が弱く、胃が特に弱いせいで、体重が30キロしかなくて、日常生活を送るのもやっとといった感じ。


食べれるものも少なく、体調が一番悪かった時期は、肉も卵も牛乳もだめ、(食べたら体が拒否反応を示して湿疹が出る)野菜や新鮮な白身の魚、パン、米などを小鳥のようにちょっとずつ食べていた。


最近ではちょっとずついろんなものが食べられるようになったのだけど・・・


じぃじがもう長くはないと知り、ショックを受けたばぁば。じぃじのことを知った日は一晩中泣いていたらしい。

食事も摂らず部屋に引きこもっているのでは、と心配になったたま。


ちょうどいい具合に、ころが出張だったので実家に泊まりで駆けつけてみたのだけど・・・


そこで見たばぁばは・・・


肉も食べれば、卵も食べる、牛乳も飲む。1日3食とおやつまで・・・


普通の人から見れば量は少なめではあるが、以前からしたら信じられない。


以前は食べることが苦痛でたまらないと言っていたのに、食事時間が近づくと自室から出てきて率先して台所に立つ。


午後3時頃、居間でたま母とじぃじの話をしていたら、ばぁばが部屋から出てくる音がする。


お手洗いかな?と思っていたら台所に現れ、パンと牛乳を出し、手に持って自室へ戻る様子。


なんだかあっけにとられてボーッと見ていたら、ばぁばがいきなりクリッと振り向き、


「たまちゃんはダイエット??」


そう言って微笑みながら去って行った。。。


声を押し殺して、笑いの発作に絶えるたま母。


なんだかつられて笑ってしまったたま。


たま母「おかしいでしょ?『ダイエット??』だって・・・ 食欲あるのはいいことなんだけど、いつもあとで胃を悪くするから、食べ過ぎはよくないんだけどね・・・でも食べたがるのよ・・・なんだか最近体重増えてるみたいよ。」


たま「ストレスで食べてるのかな?」


たま母「そうじゃないと思うよ。」



そして夕食。。。



その日は焼肉だった。


ばぁばは肉はたくさん食べられないだろうからと、ばぁばには鯛のおさしみを用意していた。


「ばぁちゃん、お肉柔らかいから、少し食べてみる?」たま母はそう言いながら、焼けたお肉を3切れほどばぁばの小皿に入れてあげる。


黙ってにこにこしているばぁば。


それでばぁばの食事は充分足りると思い、たま父、たま母、たまはその後焼肉を堪能した。あいだで1回、たまがばぁばに肉を勧めたが、にこにこしているだけのばぁば。


すると「もう食べられないでしょう・・・おさしみもあるし・・・ね?ばぁちゃん?」たま母がばぁばに聞いた。



ばぁばはにこにこ頷く。


というわけで、ばぁばを除く3人が引き続き焼肉を楽しんだ。


美味しくて、話も弾み、その夜は皆満足満足で床に就いた・・・






はずだった・・・・・・・が、不満だらけで床に就いた者が1名・・・・・・



ばぁばである・・・・



翌日、早朝から台所でうごめく人影が・・・・・



ばぁばである・・・・



後でたま母に聞いたところによると、ばぁばは、焼肉を腹いっぱい食べたかったそうである・・・


こんな暑い時に、おさしみなんて気持ちが悪かったそうである・・・


昨夜は腹が減って眠れなかったそうである・・・



ごっごめんね、ばぁば~(⊃Д`) 食事の間中ずっと我慢していたんだね~遠慮してたんだね~つらかったろうに~お肉余ってたのに~


これからはもっとばぁばのこと気遣ってあげなくちゃ。。。



午後からは皆でじぃじの病院へ。


じぃじに会えるので、ばぁばも嬉しそう。。。


じぃじに会ったばぁばは、じぃじの体をあちこちさすりながら、

「おじいさん、つらい?しんどい?私らも、もう歳だから、早く神様にお迎えに来て貰わないといけませんねぇ」涙目でそう言っていた。


痩せて小さくなったじぃじとばぁばが寄り添ってる姿にたまも泣きそうになる。じぃじだけでなく、ばぁばも弱々しくみえた。


少しして、「トイレに行ってくる。」とばぁばが言った。


「ついて行くよ。」とたまが言ったら、「ひとりでいけるからいいよ。」と言うのだけど昨夜の焼肉の件もあって、遠慮してるのではと思ってついて行った。転んで骨折でもしたら大変だ。


杖を突いて歩くばぁば。。。弱々しくなったなぁと思いながら横を歩くたま。


そのとき、前方に敷マットが置いてあるのを発見!


これは危ない!足を引っ掛けては大変だ!とばぁばに注意を促そうとするたま。


たま「ばぁば、そこに・・・・」言いかけた瞬間、ばぁばの足は上へ高らかに上がり、大きくマットをまたぎ、最後に カツンッ! と杖で床を突いた。。。華麗な足裁き。。。


そしてさっさとトイレを済ませ、病室へ戻るばぁば。


その後病院を出るときにエレベーターに乗った。エレベーターの扉のところの溝に杖を挟まないようばぁばに注意を促そうとしたのだが、その瞬間、杖は大きく振り上げられ、溝を越えていき、最後に カツンッ! と床を突いた。。。


 


どうやら・・・・・・・・・・・・・






ばぁばは元気らしい・・・・・・



じぃじのこと、一晩中泣いて、すっきりしたのかな・・・


戦時中を生き抜いた女って強いなぁ・・・


でも生きるってそういうことだよね・・・・


泣いてばかりいられない。病人を看病する生活はハードなのだ。


しっかり食べなきゃ身がもたない。 おちおち転んで怪我してられない。


ばぁばを見てると元気がでるよ・・・時々笑っちゃうよ・・・



なんだかばぁばに勇気を貰った たま なのでした。